大衆迎合政治 2012 8 26

書名 反ポピュリズム論
著者 渡邉 恒雄  新潮新書

 大衆迎合政治とは、一般大衆の関心や願望を代弁して、
大衆の支持のもとに行う政治のことでしょう。
 このような政治は、実は、小泉政権の時にも行われましたが、
最近も、同じような傾向が強く出ています。
 アドルフ・ヒトラーは、
彼の著書「我が闘争」で、このように書いています。
「民衆の圧倒的多数は、冷静な熟慮より、
むしろ、感情的な感じで考え方や行動を決めるという女性的素質を持っている。
 大衆の受容力は、非常に限られており、
理解力は小さいが、そのかわり忘却力は大きい。
 効果的な宣伝は、重点をうんと制限して、
そして、これをスローガンのように利用し、
継続的に行なわなければならない」
 さて、この本は、そういう大衆迎合政治に警鐘を鳴らす本と言えるでしょう。
今回は、私が、「読書感想文」を書くよりも、
プロの「読書感想文」を参照した方がよいかもしれません。
2012年8月22日の週刊メールジャーナルから引用します。
 渡辺氏が、類まれなる洞察力を持った第一級の知識人であることは、
これを認めないわけにはいかない。
 最後の著書と銘打った『反ポピュリズム論』(新潮新書)は、
それだけの内容を備えている。
 渡辺氏の執筆動機が、「橋下現象」を生んだ、
政治の変化の解明にあったのは、
まず、そこから書き起こしていることでも明らかだが、
次の一文は、政治の現状と渡辺氏の危機意識を見事に伝えている。
「国や地域、もしくは国民といった全体の利益になろうとなるまいと関係なく、
場合によっては、全体的利益を害する政策でも、
選挙での自己の票になることだけを目的にして、
一般大衆に公言する政治家や政治集団が増殖し始め、
それらは電波媒体、電子媒体を悪用することで、益々広がりつつある」
 まさに国を危うくするポピュリズム。
渡辺氏は、最終章に、こう書く。
「私は、ギリシャのような経済破綻を回避するために
必要な処方箋を具体的に示した。
 すなわち、消費税率の引き上げ、無税国債の導入、
社会保障への投資拡大、原発の再稼動である」
 大衆に迎合する政治家であれば、
「社会保障への投資拡大」以外は、どれも口にしない。
 マスコミの論調は、「脱原発」が正義となっており、
無税国債には金持ち優遇批判があり、消費税には弱い者いじめ批判がある。
 だが、大衆迎合政治がギリシャ危機につながったことを知る渡辺氏は、
橋下大阪市長が掲げるスローガン先行の「維新」が、
ギリシャを追い込んだパパンドレウ元首相の「変革」に似ていることを危惧する。
 そのうえで「衆愚政治」に落ちていくことだけは、
「何としても食い止めなければならない」と言い、
「それこそが、今年で86歳の私が老骨に鞭打って、
本書の筆をとった最大の理由なのである」と、まとめている。
(以上、引用)
 私は、政治家が大衆迎合政治に陥る原因のひとつとして、
こういう変化もあるのではないかと思います。
 昔は、各界の名士が政治家になる例が多かったと思います。
こうした人たちは、選挙で落選しても、
食べていくには、困らないでしょう。
 しかし、今や、政治家が生業(なりわい)となってしまったのです。
つまり、政治家という職業が、食べていくための手段となったのです。
 こうなると、生活がかかっていますから、
生きていくためには、いや当選するためには、何でもすることになります。
政策的に自己矛盾することでも、お構いなしとなります。
 これでは、政治家は、芸能人と大差がなくなります。
芸能人が人気を得ようとして何でもするように、
政治家も、同じようなことをするでしょう。
 現代の独裁者は、民主主義から生まれています。
アドルフ・ヒトラーも、選挙で勝ってから、独裁者となりました。
「民衆の圧倒的多数は、冷静な熟慮より、
むしろ、感情的な感じで考え方や行動を決めるという女性的素質を持っている。
 大衆の受容力は、非常に限られており、
理解力は小さいが、そのかわり忘却力は大きい。
 効果的な宣伝は、重点をうんと制限して、
そして、これをスローガンのように利用し、
継続的に行なわなければならない」





































































































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